企業のDEI担当者による覆面座談会 Vol.2

対談/座談会・インタビュー

企業のDEI担当者による覆面座談会 Vol.2


 

Cさん:今お話があった男女のカテゴリ分けに関連して、やっぱり社員には一人一人を尊重してほしいという思いがあると思っています。

 

カテゴリー分けをしないでほしいという話を心情として理解する一方で、会社として、男性、女性というカテゴリー分けをしないと業務を進めにくい面もあります。例えば健康診断を社内でやっているので性別を知りたい、女性活躍推進に関して女性の数のカウントが必要だと言われて女性をカウントする、という矛盾した活動もひとつの組織の中でやっているっていうジレンマがあるので、ここの落としどころはちょっといずれ見つけたいなと思っているところですね。

 

Bさん:まさに、有価証券報告書はなぜ男性、女性別の従業員人数を載せるのかと算出しながら考えます。

また、人事情報の管理マスタから性別を外すことが可能か委託先と検討したことがありますが、健康保険組合や年金では男女の記載が必要なため、外すことはできませんでした。

 

定期健康診断実施時の医療機関の応対や、複数のテナントが入っているビルでの多目的ではないトイレの利用など、社内の教育だけでは届かないところもあって、当事者本人には会社は理解があるけど、ごめんなさいとお伝えする経験もありました。だからそうそういう意味で社会がやっぱり変わっていかないといけないなと思うときがあります。

 

Eさん:人事としては女性活躍推進法にのっとって、ちゃんと女性を活躍させているというエビデンスのためには数字をとらなきゃいけないし、でもLGBTQのことを考えるとジェンダーで分けることの難しさもあり、どちらの多様性も大切にしようとすると、とても難しいですね。

 

Bさん:まさにアワードに応募する書類を作成する中で、例えば女性の管理職何パーセント以上という項目の数値を出すけれど、女性のカウントは身体的な観点のことなのか?など本当に正しいのかわからないと思うことがあります。

 

モデレーター:私もダイバーシティの話をするときに女性管理職比率が非常に高い会社ですと言って、その直後にLGBTQの話とかしたりしていると、何をやっているんだろうという感じになってしまうことがあります。ただおっしゃる通り女性活躍推進ということは力を入れてやるべきことでもあり、数字の目標を掲げ、現実的に女性が活躍している景色を作っていくってことも重要なので難しいところですよね。

 

Aさん:私もずっと疑問に思っていることがあって、今の女性管理職の数にプラスで、その女性の管理職に子どもはいるかという調査もあるんです。子どもを産むか産まないかは、本人の選択だし、毎年出している調査結果ですけれども、なんでそこまで調査する必要があるのだろうというのは感じています。

管理職になって子どもがいるっていうのは、ワークライフバランスが取れているってことだよねと、おそらく言いたいんだと思いますが、子どもがいる、いないまでをなぜ聞かなきゃいけないのかなっていうのは思いますね。

 

Dさん:そうですね。そういうアワード系の調査票が時代に合わせてアップデートされていない感もありますよね。

 

Aさん:そうですね。評価してもらうために一生懸命に答えてはいるんですけど、やっぱり先程の話もそうですけれど、疑問に思いながら回答している部分は正直ありますね。

 

Dさん:ある調査の項目に対して、この項目はいらないとか、フィードバックをしたことがあるんですが、いろんな企業さんがある中で、まだ過渡期で参考になるから、外せないというような回答もいただいていて、新しいチームで、これからという人がいるとするといろんなデータがあると、情報になるのかな思いつつ、やっぱり本当にこの項目は必要なのかどうかの精査は進めてもらいたいところですよね。

 


 

モデレーター:時間もだいぶ経ってきましたので、そろそろクロージングとさせていただこうと思いますが、最後に一言ずつ今後どういうところに力を入れていきたいか、どういうことを実現していきたいかなど、順番にお話しいただけますでしょうか。

 

Bさん:私個人としては、若い方々を見ていると、特定のカテゴリーには括られるということではなくて、自分らしく働きたいと思われている方が増えている印象があります。そして、会社との距離感も人によってまちまちで、仕事をする場所だからあまりプライベートのことは言いたくないという人がいたり、ちゃんと自分ことを理解してもらい話して聞いてもらえるのがうれしいという人もいたりするので、一人ひとりとどう向き合い、人事として会社に貢献していけるのかというのは、1つテーマとして対応しているところです。制度だけではなく、風土で解決しなければならない部分も多数あると思っています。本日はありがとうございました。

 

Aさん:今日はありがとうございました。当社の取り組みとしては、制度面といったところは、一通りやれてきたと思っていますが、冒頭に申し上げたとおり、カミングアウトしている方が社内にいない状況で、カミングアウトをする、しないはご本人の自由ですが、心理的安全性がまだ社内で確保できてないのかなっていうのも実感しています。D&Iを会社としてなぜやっているのか全社で腹落ちして、だからこそこういう制度ができてこういう活動をしているということを理解浸透していくっていうのがやっぱり最大のミッションだなって思っているので、その取り組みをこれから強化してやっていきたいと思っています。

 

Eさん:マイノリティーの理解を深めようとすると違うマイノリティー性に気づくという体験が増えてきて、D&Iを多様性のカテゴリーを増やす方向ではなく、インクルージョンを深める方向で活動していきたいなと思っています。

 

最近、コミュニティのトランスジェンダーの社員が健康診断の際に健康保険組合に相談をして、個別の更衣室を使えることができたんですが、彼女が健康診断から帰ってきたときに、「これってオストメイトの人とか、それ以外でも人前で裸になりたくない人にもすごく優しい仕組みだね」とフィードバックをしてくれました。トランスジェンダーにはこれが必要とか、それぞれのマイノリティに独自のものを用意するというよりも本当にインクルーシブであることが大切なのかなと思います。また女性とLGBTQの権利は、ぶつかっってしまうものではなく、どこかに落としどころが見つかると希望を持って、そこも含めて活動していきたいなと思います。ありがとうございました。

 

Cさん:みなさんのお話を聞いて、これからは、一人一人の社員の声を大事にして、やさしい文化風土っていうのを作っていきたいなと改めて思いました。会社として効率とか生産性向上の縛りにだけとらわれてしまうと、均一なカテゴリー分けの方向にいってしまうのですが、これからの時代はそういった時代ではないんだなということを改めて感じました。本日はありがとうございました。

 

 

Dさん:インクルーシブな職場を推進するときに、制度面と文化面の両方のアップデートが必要だと思っています。目に見えない文化は、なかなか測定や実感が難しいですが、身近なところで、人に対する優しい気持ちや、助け合いといったアライの気持ち、そして行動というのは誰もができることだと思います。よくLGBTQと一括りにしがちな話題ですけれど一人一人それぞれ違います。それぞれお互いに助け合って、より良い職場空間を作り、助け合いの文化を一層醸成していきたいと思っています。ありがとうございました。

 

モデレーター:本日はありがとうございました。私からも最後に一言。先ほどもちょっと触れましたが、なぜこの取り組みを進めているのか、ダイバーシティは何を目指すのかということを外さないように、単に何が何パーセント上回った、下回ったとか、賞を取ったとか、そういうことだけを追わないダイバーシティを実現できるように、私個人も、そして社内にも浸透していきたいと考えています。

 

本日は、皆さんありがとうございました。

 

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