これからLGBTQに関する取り組みを進めたいと考えていますが、どんなことから始めたらよいでしょうか。

取り組みQAガイド

企業・団体でLGBTQの取り組みを進めている、またはこれから進めていこうと考えておられる人事・DEI(Diversity,Equity&Inclusion)担当のみなさまが、これからさらに取り組みを推進いただけるよう、work with Pride実行委員会が制作したLGBTQに関する取り組みQA集です。これから取り組みをはじめる企業・団体のみなさまも、すでに進めておられるみなさまも、こちらを参考に取り組みをさらに進めていただけると幸いです。ぜひご覧ください。

これからLGBTQに関する取り組みを進めたいと考えていますが、どんなことから始めたらよいでしょうか。

会社として、なぜLGBTQに取り組むのか、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの視点から経営層が理解して、トップから社内発信することが大事だと考えます。経営層の意識を変えるために、当事者による講演などで当事者のリアルな声を直接聞いてもらう機会を作るのも、理解を進めるのに有効だと考えます。

会社として取り組みを推進していくことになりましたが、具体的な取り組みは何から進めたら良いのでしょうか。

必要に応じて、他社や自治体の取組についてヒアリングなど行って、進めていただければと思いますが、社内ではまず、以下の取組を進めてはいかがでしょうか。

◎差別禁止の明文化
性的指向・性自認に関する差別禁止を社内方針に明文化して、WEBサイト等で社内外に周知を図る。

◎LGBTQに関する理解促進の啓発
従業員を対象とした集合研修やEラーニングの実施、社内ホームページにLGBTQの基礎知識を掲載するなど、理解促進を図る。

その後、LGBTQに関する外部イベントを周知して参加を募ったり、社内にLGBTQに関する相談を受け付ける窓口の設置や、LGBTQに対する社内制度整備を進められるのが良いのではないかと思います。

LGBTQについて基礎知識がありません。研修教材はどのように作成すればよいでしょうか。

以下を参考に作成を進めてはいかがでしょうか。

◎LGBTQに関する書籍を読んだり、LGBTQの活動を進めている団体や企業が基礎知識をまとめ制作したハンドブックなどの冊子を参考にすると、ポイントが整理できた研修教材が作成できるのではないでしょうか。
冊子のPDFがWEBサイトで公開されていたり、情報を提供されているところがありますので、提供元へ問い合わせ等を行い確認の上、社内で配布することもできるかと思います。
また、LGBTQに関する動画視聴を研修のなかに取り入れることにより、より理解が深まるのではないでしょうか。

◎LGBTQの活動を進めている団体や企業で、Eラーニングの教材が用意されていたり、自社用にアレンジしてくれるところもあります。時間や予算をお問い合わせの上、検討し制作いただくのもよいと思います。

すでに取り組まれている企業はどのようなきっかけで取り組みを進めるようになったのでしょうか。

各社それぞれかと思いますが、LGBTQの当事者から困りごとや、相談があったことがきっかけとなり取り組みをはじめた企業や、社会的な世の中の動きから、会社で取り組むことが必須だと実感したことがきっかけで、取り組みを始められたなど、さまざまなお話をうかがいます。

LGBTQに対して、どのような社内制度を設けたらいいのでしょうか。

次のような社内制度の導入を検討し、進めてはいかがでしょうか。

◎同性パートナーがいる従業員に、異性による法律婚のパートナーがいる従業員と同様に、以下のような制度が利用できるようにする。
 ・休暇や休職(結婚、出産、育児、家族の看護・介護など)
 ・支給金(お祝い金、見舞金、家族手当など)
 ・赴任(赴任手当、移転費など)
 ・福利厚生(社宅、家族割、保養所利用など)

◎トランスジェンダーの従業員(求職者)に、以下のような取り組みを行う。
 ・健康診断や更衣室、服装など、性別の扱いを本人が希望する性にする。
 ・自認する性に基づく通称名の使用を認める。
 ・就職時のエントリーシートに希望する性別を記入できる、性別欄に「その他」「記載しない」などの項目を設ける。

研修や社内制度の他に、どのような取り組みを進めたらいいのでしょうか。

以下のような取り組みを進めてはいかがでしょうか。

◎トランスジェンダーに対応した「だれでもトイレ」を確保。身体障がい者用トイレのシールを変更するなどでも対応可能です。
また、ユニフォームがある会社においては男女兼用とすることでトランスジェンダーへの配慮になります。

◎アンケート実施の際は性別の回答を避けたり、性別を聞く場合でも「男性/女性/回答しない」にすることでトランスジェンダーへの配慮になります。

◎社内でアライを増やす活動を行う。アライが増えることによって、当事者が自分らしく働ける会社の風土づくりにつながります。

◎各地で開催、活動しているLGBTQに関するイベントや取り組みを、企業として支援、応援する。

アライの活動は、どんなことをしたらいいのでしょうか。

以下は、一例となりますが、参考に活動されてはいかがでしょうか。

<個人で>
◎LGBTQについて本や動画、イベントなど知識を得ることで、より理解を深める。
◎得た知識や情報を、まだ理解が進んでいない方や、知る機会のなかった方なども含め、会話や発信を行い、情報を共有する。
◎アライであるということを表明し、社内外で、間違った理解の発言を耳にしたりした時などに、アライとして注意を促す発言や、行動を行う。

<社内で>
◎LGBTQをテーマに誰でも参加しやすい社内映画鑑賞会など、知識や理解を深めるイベントを開催する。
◎社内でアライを表明された社員によるパネルディスカッションを実施して理解を深める。
◎アライを表明された社員の方へ配布するための、アライシールやアライ壁紙を作り、配布し使用してもらう。
◎東京レインボープライドなど、各地で開催されているLGBTQ関連のイベント情報など、社内イントラサイト内で告知。参加を募って参加する。
◎企業によって使用されているソフトウェアはさまざまかと思いますが、会社で設定し使用されているメール等で使用している個人写真にレインボーリングを付与し、アライを表明してもらう。

<レインボーリングイメージ>

社内でアライのネットワークはどうやって作ったらいいのでしょうか。また、アライを増やするにはどうしたらいいのでしょうか。

人事・DEI担当者の方がネットワークを作って推進されたい場合は、イベントや研修、勉強会などの際にアライの呼びかけや、募集を行ってみるのが有効かと考えます。
経営層にアライの方がいらっしゃれば、リーダーになっていただき、取り組む想いを持ったメンバーを募り、社内へ発信いただくことで、より理解が進み、アライの活動が活性化され、推進されるのではないでしょうか。

社内でアライを増やすためには、一時的な活動ではなく、定期的な社内イントラでの情報発信や、イベントや勉強会などを継続的に行うことが必要だと思います。

社内でアライを増やしたいと思っていますが、社員にアライを表明してもらうあたり、必要なこと、注意すべきことはありますか。

当事者は、アライを表明された方をLGBTQのことを理解し、支援する気持ちを持つ方だと見ています。
アライを表明するシールや壁紙を使用し、アライとしての発信をされているにも関わらず、その方が心ない発言や行動をした場合、当事者はその方はもちろん、他のアライを表明されている方へも同様の不信感を抱いてしまい、さらに会社の取り組みに対する信頼の気持ちを失ってしまう可能性があります。
アライ表明される方には、名ばかりのアライとなってしまわないように、LGBTQのことを理解された上で、発言や行動するよう意識付けが必要だと思います。

社内の当事者の声や意見を聞きたいと思っていますが、どうしたらよいのでしょうか。

一例として、以下のような取り組みをされてはいかがでしょうか。

◎匿名で回答ができる社内アンケートを定期的に行い、全社員対象のES(従業員満足度)調査やエンゲージメント調査の中に設問を組み込むことも有効です。

◎アライ活動の中でコミュニティに意見を聞く場を設けて、当事者の声を聞く機会を作ってみるのもよいのではないでしょうか。

トランスジェンダーの方への通称の使用について、どのような事例がありますか。

通称名に関しては、旧姓使用と同じ仕組みで使用できるようにしてはいかがでしょうか。

トランスジェンダーの方が、自認する性のトイレ、更衣室の使用を希望された場合、どのように対処したらよいのでしょうか。

企業ごとの個別の対応になるかと思いますが、まずは希望する当事者と対話された上で、自認する性のトイレ、更衣室の使用を希望された場合は、自認する性のトイレ・更衣室を使用いただく、または性別に関わらず、どなたでも使用できるトイレや更衣室を、整備し使用されることを望みます。
自認する性のトイレ、または更衣室使用にあたり、当事者の希望を聞いた上、必要に応じて他の社員との対話、また他の社員からの意見が出た場合は、社員の意見を聞いた上、双方で対話しながら、各社で対応いただければと思います。

制度や相談窓口など導入していますが、なかなか活用されません。どうしたらいいのでしょうか。

制度や相談窓口の導入は、カミングアウトや当事者を顕在化することを目的としている訳ではないので、当事者の心理的安全性の確保や、何か相談したいことが出てきた場合に窓口として対応ができるよう、継続的な研修や、情報発信などを実施することが大切ではないでしょうか。

利用が少ない理由として、まだ制度利用や相談するにあたって、社内での心理的安全性が確保できていないと感じられている可能性も考えられます。より安心して制度利用ができる環境、風土づくりにより変化が出る可能性もあるかと思いますので、継続的に取り組みを推進いただくのが有効だと考えます。

導入した新しい制度など、当事者へ情報が届いていない気がしています。しっかり届くようにするには、どう周知したらいいのでしょうか。

人事通達や、社内イントラ等での発信と合わせて、研修時や、社外での取り組みを発信する際に、導入した人事制度などの情報も必ず合わせて伝え、継続的に情報発信をすることが必要かと思います。
LGBTQに関するアンケートを実施する際や、アンケート結果を公表する際に、人事制度へのリンクを設定することで関心の高い当事者へ情報を届けやすくなったという企業もあるようです。

相談窓口を設けたいのですが、スキルがないため相談を受けられません。また制度などすぐに改善ができない相談を受けた場合はどうしたらいいのでしょうか。

スタッフへの研修を行った上で、秘密厳守を前提に、丁寧に対話をし、今できること、すぐにはできないことを確認しながら対応してはどうでしょうか。スキルがなくても、相談者に配慮しつつ、まずは話を聞いて一緒に考えますという姿勢を持つことで、コミュニケーションは可能だと思います。

全ての相談に応えられない場合もあるかと思いますが、まずは相談を受け止め、今何ができるか確認し、今後に向けて真摯に対話をすることが大切かと思います。
社内で対応できないセクシュアリティについての悩みなどは、社外の公的な窓口を紹介するなど、対応方法を検討した上で、整理していただくと良いのではないでしょうか。

相談対応のマニュアル作成を検討していますが、どんなことをポイントにして作成したらよいのでしょうか?

相談をされる方は、勇気を出して相談されていると思いますので、秘密厳守を前提に、まずは相談の内容をしっかりと聞き、どこまでに情報は公開してもよいのか、どうしたいと考えているのかなど、相談者の思いをしっかりと受け止め、会社としてどう対応できるか確認し、対話しながら進めていくことが大切だと思います。

また、パワハラ防止法においては、SOGIハラスメント(相手の性的指向や性自認に関する侮辱的な言動)、アウティング(労働者の性的指向・性自認などを本人の了解を得ずに暴露すること)といった行為もパワーハラスメントであると、明確に謳われています。このことを前提に企業にはそれらを防止する義務があることを念頭において、検討し整理いただくのはいかがでしょうか。

研修やイベントへの自主参加が少ないのですが、どうしたら増やすことができるのでしょうか。

みなさん日々の業務もあり、自主参加の時間が取れないという場合も多いかと思います。または情報が届いていない可能性もあるかと思いますので、定期的な発信を行うなど社内に確実に情報が届くようにする方法を検討することも大切かと思います。

また、参加を促すために、例えば、部署内で部長など上長から働きかけてもらったり、必要な研修については、参加必須とすることで理解を深めていくのはいかがでしょうか。
参加者が特定されない(顔や名前が出ない)ウェビナーや気軽に参加しやすい映画観賞会などを継続的に企画・紹介していくことでも、少しずつ変化が生まれるかもしれません。

部署異動による担当者の変更で、今までと同様に取り組みを進められるのか心配しています。変わらずに進めるにはどうしたらよいでしょうか。

必要な研修と合わせて、前任の方と思いを共有された上で、まずは引継ぎをしっかりとやっていただければと思いますが、対応については可能な限り明文化して、対応される方が新任の方お一人だけにならないように、確認しながら進められる環境を作ることで、より安心して変わらない対応をいただけるようになるのではないかと思います。

多数事業所や支店などがあるため、それぞれダイバーシティの浸透度が違ってしまっています。本社との差をなくすためには、どうしたらよいでしょうか。

事業所や支店で浸透度が異なることは各社で共通の課題となっているようです。従業員意識調査を実施すると、ダイバーシティの浸透度が高まることによって、社員の会社に対する満足度が向上することがわかったという話を聞きます。
ダイバーシティの浸透度が低いことが、社員の会社に対する満足度にどんな影響をおよぼしているのかを、社内で見える化することによって、事業所や支店でもダイバーシティをより浸透させることが必要であると実感できると思います。

差を縮めるためには、本社からの全社に向けた情報発信や研修など継続的に取り組みを進めることや、各事業所ごとの推進を促す仕組みを作っていくことで、事業所や支店での浸透度の差が一歩一歩でも縮まっていくのではないでしょうか。

役員など経営層へLGBTQへの理解を、さらに深めてもらうにはどうしたらいいのでしょうか。

一例ではありますが、以下のようなことを進めるのはいかがでしょうか。

◎理解が進んでいないと感じる場合は、まずは当事者の話を聞いてもらうなど、知る機会を作り、理解を深めてもらうことが必要だと考えます。また、取り組みを継続させていくことが重要ではないでしょうか。

◎全社に向けたD&Iフォーラム等でLGBTQをテーマとして取り上げ、社内外の情勢を知ってもらうことで、より理解を社内へ広げることができると思います。また、役員や経営層へのアンコンシャスバイアス研修を導入している企業も増えているかと思いますが、その中で、LGBTQに関する偏見も加えてみるのも有効かと思います。

LGBTQに対する理解があり、社員一人一人が「自分ごと」として意識し、「誰もが働きやすい」職場を実現するためにはどうしたらいいのでしょうか。

まずは経営トップの社員一人一人を大切にするというコミットメントが必要だと思います。その上で、社内で定期的な研修の実施や情報発信を、継続して行っていくことが大切だと思います。