企業のDEI担当者による覆面座談会 Vol.1
企業のDEI担当者による覆面座談会 Vol.1
モデレーター:それでは、ここで少し話題を変えさせていただき、冒頭で皆様からもお話がありました、なかなか会社の風土として浸透しないという点について、お話を伺えればと思いますが、Aさんいかがでしょうか。
Aさん:弊社は基本的人権の尊重に力を入れている役員がいて、同性婚や、L G B T平等法など法整備への賛同については、企業として賛同すべきだとトップが行動しているので、アピールしやすいです。
当事者の方からは、賛同表明してくれて、すごくうれしいとすぐ反応はありますし、アライの方からなど、会社が変わってきたという声は上がってきますね。
モデレーター:そうなんですね。ちなみに弊社だと、何かしらアクションをしても「ありがとう」と積極的にお話していただく方と、何も関心がない人もそれなりにいることは肌で感じている部分もあるのですが、そういった静かな人たちに浸透させるために活動されていることなどありますか?
Aさん:弊社では、アライのサイトがあるのですが、アクセス数を見ていると、壁紙のダウンロードをしてくれていたりして、結構見ていただいている数字が出ているので、そのサイトには定期的に情報をアップすることを心がけています。
モデレーター:やはり社内コミュニティに定期的にテコ入れしていくのは、結構効果的ですよね。Cさんは、社内コミュニティに関して、どんなアクションをされていますでしょうか。
Cさん:弊社では社内コミュニティの有無を把握していないので、わからないというのが正直なところですが、冒頭で申し上げた通り、やはり普段の会話の中で傷つけてしまう何気ない一言を見聞きするという話は聞くので、そうしたことをいかになくしていくことができるかが課題だと思っています。
論点がずれますけど、制度の紹介もそうですし、皆さんの周りにも当事者はいるということを、間隔を空けずに定期的に発信していくことが、今のダイバーシティ部門のLGBTQに関する取り組みのスタンスです。
モデレーター:取り組みをされている中で、社員の心ない言動で嫌な気持ちになったというお話は、匿名の相談窓口とかに寄せられたのですか?
Cさん:いえ、相談窓口へ届いたということではありません。匿名の相談窓口は、弊社では電話と専用のメールアドレスを用意して対応していますが、一切相談は入ってこないですね。おそらくさっきの社宅の話と同様で、相談をすることで誰かにバレてしまうのではないかという恐怖心を持たれているかもしれませんが、電話もメールも来ない状況です。
今回の話はあるルートで社内の当事者の方から話を聞く機会があり、その際、当事者の方から伺いました。社員が日常の会話の中で、「会社で心ないことを言っている発言を耳にすることはたくさんあります」と聞いて、課題認識しました。制度があっても利用されないことは、もしかすると、そんなに問題じゃないのかもしれないのですが、制度があることは重要だと思いますし、相談したいと思ったときに、相談窓口や制度があることを知っているということが重要なのかなと思っていて、積極的に声を聞きに行くというよりは、こっちから見てね、使ってねという発信をしていくことが重要なのかなと思っています。
モデレーター:そうですね。まさに我々のような人事部門からを社内不特定多数に向かってアクションをすることが、やはり社内の皆さんがそれぞれ知って、感じ取って、行動することにつながると思いますね。Dさんはいかがでしょうか。
Dさん:数年前にトランスジェンダーの社員の上司がなかなか悩みを社内で共有できないので、知っている方を紹介してほしいという相談があり、人事情報に登録もしていませんので、広く社員に呼びかけて交流会を開催しました。知り合いの社外のLの方やGの方、FtM、MtFの方に来ていただいて、社内でカミングアウトしている方、されてない方など、さまざまでしたが、人生においての悩みとか、社会でどんな気持ちで働いているかとか、いろいろ話していただきました。
しかし、制度はあるが、なかなかカミングアウトに至らない最後のトリガーって何なのかなっていうのはわからず、いつも考えていますが、なかなか正解がないのが実状です。
社員の中でも人数の少ない部門に配属されていた時はカミングアウトしていたけど、人数の大きな部門に配属された時には、いろんな人がいて、どんなこと言われるかわからないからクローゼットになったという社員もおり、継続的に研修を行うことも大事だと思っているのですが、それだけじゃなくて、やはり何かが足りないのだろうなと思っています。当事者の方は、カミングアウトできないことについての悩みが非常にあって、交流会でまずはそういう悩みを共有して、少しでも解決策がないか相談する機会を作っていきたいですし、人事部門として、具体的にどうアクションを取ればいいかについては、まだはっきりしたことが、自分の中でも、まだ見いだせてないというのが現状です。
モデレーター:Bさんの会社の場合、カミングアウトをしたいが、どうしたらいいかといった悩みを持つ方は、各事業会社様のそれぞれの担当にご相談がいく形になっているんですか?それともまとめて一つの相談窓口に連絡くださいとされているのでしょうか。
Bさん:社内の相談窓口としては、我々が一元的に担っていまして、私ではありませんが、実名を出して特定の方が対応する形でメールにて受け付けています。
ただ、やっぱりカミングアウトされる方は職場内で心を許す方に相談されることが多いので、実際には我々のところに相談が入ってくるのは、職場で解決できないかもしれない、と不安に思われる方かと思います。最近社外の方から、「御社の社員は、当事者がカミングアウトしないで就労している環境を前提に、今どうしても叶えたいものが無い限りはおそらくカミングアウトされないと思います」とはっきり言われました。ご相談を頂ける方は、良い意味で会社の風土に慣れていない方、例えば労働者派遣の方ですとか、中途採用の方なのかもしれないと思います。
カミングアウトされないから、困っていないし、何もしなくていいのではないかとならないように、社内の雰囲気を作っていき、我々が何か行動することに意味があるということを、社内に継続的にわかっていただきながら、進めていくいくことが大切だと思っています。
モデレーター:勤続年数の長い方ですと、良くも悪くもその会社の雰囲気になじんでしまって、ご自身のナチュラルな姿でなくても、なんとかやっていけるからいいやと思っている方も、おそらくそれなりにいらっしゃるかなと思います。
それは当社も含めてですが、実際人事部門等で把握している規模からすると、LGBTQ当事者の方は、なかなか認知されておらず、そういったところは粘り強く風土改革、啓蒙をしていかなければならないと、私も思っているところです。
(次ページへつづく)